みなさんこんにちは。
今回は肺保護換気戦略について詳しく説明していきます。
面倒な予測体重や換気量の設定の簡易計算ツールも作成しました。
ARDSの治療や人工呼吸器基礎編の記事もありますのでそちらも併せてお読みいただくとより理解が深まるかと思います。
人工呼吸器管理において肺保護換気戦略は大変重要な概念です。この戦略を理解し実践することで、人工呼吸器関連肺損傷(VALI)を予防し、患者さんの予後改善につながります。
https://www.svhlunghealth.com.au/conditions/ards-acute-respiratory-distress-syndrome
Contents
肺保護換気戦略とは
肺保護換気戦略(Lung Protective Ventilation Strategy)とは、人工呼吸器による換気自体が肺を傷つけてしまうことを防ぐための換気方法です。
人工呼吸器は患者さんの呼吸を助ける大切な医療機器ですが、使い方を誤ると逆に肺を傷つけてしまうことがあるのです。これを人工呼吸器関連肺損傷(VALI:Ventilator Associated Lung Injury)といいます。
VALIには様々なメカニズムがありますが、主に肺の過伸展(容量損傷)や気道内圧の上昇(圧損傷)、無気肺と換気の繰り返し(アテレクトラウマ)などが原因となります。
これらを防ぐために生まれたのが肺保護換気戦略です。
低用量換気(Low Tidal Volume Ventilation)
肺保護換気戦略の中心となるのが低用量換気です。
従来は一回換気量(TV)を10~15ml/kgで設定することが一般的でした。しかし大規模な臨床研究(ARDSnetスタディ)により、一回換気量を6ml/kg(予測体重)に制限することで死亡率が低下することが証明されました。
現在では一回換気量を6~8ml/kg(予測体重)に設定することが推奨されています。またプラトー圧(気道内圧のピーク圧)を30cmH2O以下に保つことも重要です。
“優しく換気する”というイメージですね。
肺を過伸展させないように小さめの換気量で管理するということです。
予測体重(Predicted Body Weight:PBW)とは
ここで重要なのが”予測体重”という概念です。
一回換気量を設定する際、実際の体重ではなく予測体重を使用します。なぜなら実際の体重には脂肪や浮腫などが含まれており、肺の大きさを正確に反映していないからです。
予測体重は身長と性別から算出される理想的な体重のことで、肺の容量をより正確に反映していると考えられています。
予測体重(PBW)の計算式
男性:PBW(kg)= 50 + 0.91 × (身長cm – 152.4)
女性:PBW(kg)= 45.5 + 0.91 × (身長cm – 152.4)
例えば身長170cmの男性の場合を計算してみましょう。
PBW = 50 + 0.91 × (170 – 152.4)
= 50 + 0.91 × 17.6
= 50 + 16.016
= 66.016 kg
となります。
この予測体重をもとに一回換気量を設定していくわけです。
一回換気量の設定
予測体重が計算できたら、次は一回換気量を設定します。
肺保護換気戦略では6~8ml/kgが推奨されています。
先ほどの身長170cmの男性(予測体重66kg)の場合を考えてみましょう。
・6ml/kg の場合:66kg × 6ml = 396ml ➡ 約400ml
・8ml/kg の場合:66kg × 8ml = 528ml ➡ 約530ml
つまりこの患者さんの場合、一回換気量を400~530ml程度に設定することになります。
ARDSなど重症の呼吸不全の場合は6ml/kgを目標に、比較的軽症の場合は8ml/kgでも良いでしょう。
実際の臨床では患者さんの状態や血液ガスデータ、プラトー圧などを総合的に評価しながら調整していきます。
予測体重・一回換気量計算フォーム
実際に計算するのは少し面倒ですよね。下記のフォームで簡単に計算できますのでぜひご活用ください。
予測体重・一回換気量計算フォーム
まとめ
今回は肺保護換気戦略と低用量換気について説明しました。
予測体重の計算は少し複雑ですが、上記の計算フォームを活用していただければ簡単に算出できます。
人工呼吸器管理において、一回換気量の設定は大変重要です。予測体重をもとに6~8ml/kgで設定し、プラトー圧30cmH2O以下を目標に管理していきましょう。
この肺保護換気戦略を実践することで、VALIを予防し患者さんの予後改善につながります。
集中治療領域で働く看護師として、人工呼吸器の設定の意味を理解し、適切な管理ができることは大変重要です。
一緒に頑張りましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。



コメント