みなさんこんにちは。
今回はARDS(急性呼吸窮迫症候群)の治療について説明しようと思います。
コロナ禍でもARDSというワードだけでも聞いたことあるのではないでしょうか。
集中治療室で勤務されている方、ARDS患者さんを自信をもって管理できますか。重症化すると予後が厳しい疾患であり、集中治療領域において大変重要な病態です。
以前、人工呼吸器や低酸素血症についても記事を書いていますので、そちらも合わせてご参照いただくとより理解が深まるかと思います。
ARDSとは
ARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome)は急性呼吸窮迫症候群のことをいいます。
敗血症や肺炎、誤嚥などさまざまな原因によって肺の炎症が引き起こされ、肺胞毛細血管が障害されることで血管透過性が亢進します。その結果、肺水腫を来し、重度の低酸素血症を呈する病態です。
心原性肺水腫とは全く別の病態ですが、心原性肺水腫が合併することはあり得ます。また発症から一般的には24時間から48時間以内に発症するといわれます。
特徴的なのは、酸素投与を行ってもなかなか酸素化が改善しにくいという点です。これは先日説明した低酸素血症の分類でいうところのシャントやV/Qミスマッチが関与しているためです。
診断基準としてはベルリン定義が有名ですが、P/F比(PaO2/FiO2比)という指標を用いて重症度分類がなされます。P/F比が300以下でARDSと診断され、200以下で中等症、100以下で重症となります。
https://www.svhlunghealth.com.au/conditions/ards-acute-respiratory-distress-syndrome
ARDSの治療戦略
ARDSの治療は大きく分けて原因疾患への治療と、肺保護的な呼吸管理の2本柱となります。それぞれ詳しく説明していきますね。
原因疾患の治療
当然ではありますが、ARDSを引き起こしている原因疾患の治療が最も重要です。敗血症であれば感染源のコントロールと抗菌薬投与、肺炎であれば適切な抗菌薬治療といった具合です。
原因疾患が改善しなければ、どれだけ呼吸管理を頑張ってもARDSは改善しません。原因疾患へのアプローチを常に忘れないようにしましょう。
肺保護換気戦略
ARDSの呼吸管理で最も重要なのが、この肺保護換気戦略です。人工呼吸器による換気自体が肺を傷つけてしまう人工呼吸器関連肺損傷(VALI)を予防することが目的です。
具体的には一回換気量を6~8ml/kg(予測体重)に制限し、プラトー圧を30cmH2O以下に保つことが推奨されています。つまり、肺を過伸展させないように”優しく”換気するということです。
また適切なPEEP(呼気終末陽圧)の設定も重要です。PEEPをかけることで無気肺を予防し、肺胞のリクルートメント(再開通)を促します。ただしPEEPを上げすぎると循環動態に影響を及ぼすため、適切なバランスが求められます。
人工呼吸器のモードとしてはA/CモードやSIMVモードなどが用いられることが多いですが、最近ではAPRV(Airway Pressure Release Ventilation)という特殊なモードも注目されています。こちらについても機会があれば詳しく説明しようと思います。
体位管理:腹臥位療法
中等症から重症のARDS患者さんに対しては、腹臥位療法(プローニング)が有効とされています。
腹臥位にすることで背側の無気肺が改善し、換気血流比が改善することで酸素化が向上します。これは仰臥位で寝ていると重力の影響で背側に血流が多く集まる一方で、背側は無気肺になりやすいという問題を解決する方法です。
1日12~16時間程度の腹臥位を推奨されていますが、実際の現場では体位変換の手間や、ライン類の管理、褥瘡のリスクなど看護師の負担が大きいのも事実です。チーム全体で協力して実施することが大切ですね。
その他の治療法
重症例では筋弛緩薬の投与が検討されることもあります。患者さんと人工呼吸器の同調性を改善し、酸素消費量を減らすことが目的です。
また輸液管理も重要で、肺水腫を悪化させないように輸液量を制限する保存的輸液管理が推奨されています。ただし循環動態とのバランスを見ながら慎重に管理する必要があります。
さらに重症例では体外式膜型人工肺(ECMO)の導入が検討されます。ECMOは肺の代わりにガス交換を行う装置ですが、導入には高度な技術と管理が必要です。こちらについても別の機会に詳しく説明できればと思います。
まとめ
ARDSの治療について説明しました。原因疾患の治療と肺保護換気戦略が治療の柱となります。
集中治療領域で働く看護師として、ARDSの病態を理解し、適切な呼吸管理や体位管理を実践できることは大変重要です。また医師や理学療法士など多職種と連携しながらチーム全体で患者さんをサポートしていくことが求められます。
重症患者さんの管理は大変ですが、一緒に頑張りましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。




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